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空の湯の過ごし方<第1話>海外から成田空港に到着した

これは成田空港温泉 空の湯を舞台に繰り広げられる甘くて温かい物語である。
登場人物

温井 好一

自宅のさいたま市から品川の和菓子メーカーに務める35歳独身。

世界中で急速に知名度が上がった和菓子を海外に広めるために世界を飛び回っている。

趣味は自転車と温泉めぐり。
泉 芝子

Tコ町で生まれTコ高校を卒業後、地元の清掃会社に務める28歳独身。

趣味は旅行。
<海外から成田空港に到着した>

LAから成田行きの飛行機のシートの上でゆっくりと目覚めた好一は時計を見ると日本時間で22時を回っていた。現地での仕事は順調に進み予定通りに空港に着いたのだが、バードストライクの影響で出発が5時間も遅れてしまった。23時23分の京成スカイライナーに乗れば1時間20分程でさいたま市の自宅に帰れるが、11時間の長旅の後だ、一刻も早く風呂に入ってゆっくりしたい。

そろそろ着陸態勢に入ったようだ。左側の窓からふと外をみると滑走路の間の真っ暗な中にポツンとそこだけ明るい建物がある。なんだあれは?屋上からは湯気が出ていて人影も見える。気持ち良さそうじゃないか。よし、今夜はあそこに泊まろう。
第2ターミナルに降り立ってまずは風呂の場所を探すことにした。ちょうど、清掃作業員が来たので聞いてみる。「ちょっとすいません。飛行機からお風呂らしい建物が見えたんですけど、知ってますか?」

その若い清掃作業員はモップを動かす手を止めて笑顔で丁寧に答えてくれた。「ええ、知ってますよ。それは成田空港温泉 空の湯って言うんです。昨年12月にオープンしたんです。私も週に1度は行ってます。」

「泊まれるんですか?」

「ええ、大型ソファーでもカプセルホテルでも泊まれますよ。確か個室もありましたね。」

「へえ、そりゃ良いや。どうやって行くの?」

「外に出て、23番バスのりばに20分と50分にお迎えが来ますよ。」

時計を見ると22時45分。

「ありがとう!」

好一は大きなトランクを引いてあわてて走り出した。

しかし、焦ることはなかった。北側の到着口からバス停まではわずか3分でついてしまった。程なく水色の派手なバスがやってきた。乗車口も広くて低い、いわゆるコミュニーバスと言われる車両なので、大きなトランクを持っていても楽々と乗り込むことができた。マイクロバスだとこうは行かなかっただろう。

走り出すとすぐに横風用滑走路をくぐるトンネルを抜けて空港の南側に出る。8階建ての臨空ビルを横を通り過ぎると左手に「空の湯」の大きな文字が光る建物が見えてきた。一旦通り越して、第6ゲートを出るとすぐに大きな歩道橋。千代田交差点だ。おそらく誰も利用しないであろうこの歩道橋を左折、ファミリーマートを通り越すとすぐに芝山千代田駅だ。成田空港な何度も利用しているがこんな名前の駅は聞いたことも無い。後にわかった事だが、この駅は日本で一番短い鉄道である芝山鉄道唯一の駅だ。ターミナルに電車が乗り入れる前は成田空港駅として利用していた東成田駅につながっていて、今でも通勤時間帯には京成直通で上野行きの特急が出ている。駅の信号を右折すると大きな看板が見えてきた。運が良いことに6つの信号すべてが青だったのでターミナルから約5分で建物の前まで来れたのだった。

バスを降りて建物に入ると、靴を脱がなきゃいけない。まあ、日本では当たり前なのだが、今回の出張は長かったのでつい、そのまま上がってしまった。

おっと、いけない。すぐに気がついて靴を脱ぎ下足ロッカーに靴をしまおうと思ったのだが、何やら見たこともない形のロッカーだ。昔ながらの普通のロッカーに未来的な取っ手が点いている。流れている放送によると、どうやらこれが鍵であり館内ではお財布代わりになるらしい。緑の鍵が付いているロッカーに靴入れ、鍵を横に引き抜くと赤いランプが点灯して鍵が掛かったことを知らせてくれた。

鍵を持ってフロントに行くとかわいいお嬢さんが「いらっしゃいませ、本日はどのようにご利用なさいますか?」ムフッ、やっぱり日本の女性は良いなぁ。久しぶりの日本で優しい声を掛けられた好一は何気ない言葉が新鮮だった。

「お風呂に入ってカプセルホテルで泊まりたいんですけど。」

「それではカプセルお泊りセットですね、4500円でご入浴も岩盤浴もお楽しみいただけます。」

「お腹が空いてるんですが、食事はできますか?」

「申し訳ありません、あいにく1Fのレストランは11時で閉店してしまいましたが、軽食なら2Fのカフェバーが2時までご利用いただけます。」

それは助かる。館内着やタオルなどのお泊りセットを受け取ってフロント離れようとした好一に「お客様、もし会員登録をしていただければ500円割引になりますよ。この用紙に書いて頂いてお帰りの際に持ってきて下さい。それとお荷物もお預かりします。」

なぬっ!会員登録するだけで500円もお得とな!この子は俺に気があるに違いない。好一は何やら勘違いしているようであった。
エレベータで2階に上がるとまずは薪ストーブが正面に見える。どうやら、本物の薪を燃やしているようだ。最近ではアルコールを燃やして薪はオブジェとして飾っているだけの施設が多いが、流石に田舎だけの事はある。昨年の台風でも沢山の木が倒れたので燃料には事欠かないのであろう。

隣がカフェバー。取り敢えず、一通りのお酒の種類は置いてあるようだが、ワインリストを見るとなにやら違和感。2500円、3500円、6000円の次に60000円?なにか間違ってませんか?それもそのはず、オーパス・ワンだ。似合わねー。だいたい、温泉来てオーパス・ワン飲む奴がいるか?絶対に売れないな。

さて、肝心の食事は・・・ん~、どれも期待できそうにないが、かえってその潔さに好感がもてる。缶詰は種類も豊富だしラーメンなんてチキンラーメンってどうどうと書いてあるぞ。ノーマルが300円、あと100円プラスするとカスタムしてくれる。中学校の頃、部活帰りに立ち寄った駄菓子屋のノリだな。

「では、トマトチキラーと生ビール!」
いやぁ、チキンラーメン普通に美味かった。当たり前だけど。(笑)

食事の後はいよいよ待望の温泉。

3階の脱衣所でロッカーに入れようとするが荷物が多くて入らない。今日はあまり混んでいないので、上下のロッカーを拝借。「ロッカーはお一人様、一つお使い下さい」って書いてあるが、「ごめん、今日は許して」と心のなかで呟いた。

まずは、露天風呂!気持ちいい。空が大きく見える。「フライトレーダー24」があるので飛んでいる飛行機の情報が温泉に入りながら見えて面白そうだが、今日はもう飛行機は飛んでいないので、お楽しみは次回ということで。

温泉は火山性のものでなく塩泉。しかし掛け流しと循環浴槽があって色が違う。

温泉地でもなければ掛け流しの温泉なんてめったにお目にかかれない。ねっとりとまとわりつく温泉に旅の疲れが溶けて行くのがよく分かる。極楽極楽。
翌朝、カプセルホテルで目覚めたら、時差ボケも解消しスッキリ。正直カプセルホテルの寝心地は期待していなかったが、ここは違うようだ。まず、掛け布団がよくあるペラペラ毛布じゃなくて、普通の羽毛布団、何よりもマットが硬すぎず柔らかすぎず丁度良い。

9時チェックアウトと他のホテルより早いがまあ、それでも十分寝られた。

しかし、朝食がないのが困る。400m程のところにファミマがあるが、この時期に歩くのは億劫だ。もう少し暖かくなれば畑の景色を見ながらのお散歩コースに丁度良いのだが・・・。

腹をすかせて9時10分のシャトルバスで空港へ。途中、レシートを見るとカプセルセットが安いだけじゃなく、食事代も5%割引になっている。やっぱり、あの子は俺に気があるに違いない(ありません!)

表示価格は全て税込なので、後で得した気分が味わえるぞ。

成田空港温泉 空の湯、空港のそばに良いものが出来た。

また来るぞ!
つづく